社長ブログ
自分に価値を感じるために
インドの貧しい人たちは、体は病んで苦しんでいますが、日本人は心の中にぽっかり穴があいているのではないでしょうか。
貧しい人たちの体をケアする必要があるように、寂しい思いをしている日本の人たちには、ちょっとした言葉をかけてあげてください、温かい笑顔を見せてあげてください。
それは私がインドで貧しい人々にしているのと同じことなのです。
(マザーテレサ)
マザーテレサが来日したのは、1984年。
当時の日本経済はバブル期に向けて上り坂を登っていく最中でしたが、その頃の日本人はマザーの眼にはこのように映っていたのです。
マザーにとって、物質的な貧しさだけでなく、心の貧しさはさらに大きな問題であったのです。
それから四十年。
バブル崩壊を経て、高齢化の波に洗われ、格差社会となった今の日本を見て、マザーは悲しみを深められるような気がします。
マザーは次のようにも語っています。
今日の最悪の病気はハンセン病でも結核病でもなく
自分は不必要だという思いである
マザーの言っている「自分は不必要だという思い」は、必ずしも社会的成功によって克服できるという類のものではありません。
「ちょっとした言葉をかけてあげてください」「暖かい笑顔をみせてあげてください」というマザーのことばが示しているのは、人々を孤独や孤立から救い、自分の価値を思い出させてあげてくださいということでしょう。
自分の価値を自覚し、自分が掛け替えのない存在であることを実感するためには、二つのことが大事だと思います。
一つ目には、自分の力で生きているのではなく、生かされていると感じること。
家族がどれほど深い愛情を自分に注いでくれたかを思い出してみればいい。
そして、どれほど沢山の人が自分の成長を助けてくれたかを思い起こせばいい。
自分一人で育ってきたのではなく、家族はじめ多くの人たちに大切にされ、その恩を蒙って今日あることを思えば、それだけで自分の価値の重さが見えてくるはずです。
「お蔭さま」という言葉は、人に感謝を伝えるだけでなく、実は自分の価値を上げるための言葉でもあるのです。
二つ目には、自分が人の役に立っていると感じられること。
三人の石工の話は、この点で示唆に富んでいます。
旅人がある街で三人の石工に出会いました。
一人目の石工に、「何をしているのか」と聞くと「石を積んでいる」と答えました。
二人目の石工に同じ質問をすると、「教会をつくっている」と答えました。
三人目の石工は「町の人たちの心の拠り所になる教会をつくっている」と答えました。
この三人の中で、誰が一番人の役に立っていると実感しているかは、明らかでしょう。
同じことをやっていても、自分の仕事の意味や役割をどれだけ広く深く理解しているかによって、貢献感は変わってくるのです。
そして、仕事の質もそれに比例するに違いありません。
自分にしか関心のない人、利己的な人は、貢献感を持つのは難しい。
同時に自分に価値を感じるのも難しいのです。
当の本人は少しも気付いていないが、そこにあるのは空虚でしかないのです。
マザーテレサはカルカッタの貧民街で、多くの貧しい人たちを救いました。
しかし、政府に働きかけて社会変革をしようとはしませんでした。
マザーの救済の中心は、あくまでも心の貧しさであったのです。
来日したマザーが豊かな日本で見たものは、日本人の心の中のカルカッタの貧民街だったのだろうと思います。
私の経営のテーマは、社員の皆が自分に価値を感じる会社づくりです。
そのために、利己主義や無関心をなくし、「おかげさま」と「お互いさま」の思いに満ちた「『ありがとう』の溢れる会社」をつくりたいのです。
そんな会社であれば、必ず共感してくれる人が現れ、存続発展できると信じています。