社長ブログ
社会性と人間性
数年前の会社説明会で、「仕合せな人生とはどんな人生だと思う?」と、学生に聞いたことがあります。
その時、ある学生が「苦労のない人生」と答えたので、説明会であったにもかかわらず、「お前はアホか」と叱ってしまいました。
苦労のない人生なんてあるわけがありません。生きている限り、苦労は付き纏います。
だから、苦労のない人生が幸せだと思っている人は、幸せを生涯手にすることはできません。
私は人生の過ごし方には二通りあると思います。一つは苦労を受け入れ、自分の使命を果たすために高みを目指して挑戦する人生。
もう一つは苦労から逃げようとして、却って苦労に追われる人生。このどちらかであって、苦労のない人生という三番目の選択肢はないのです。
人生の苦労には様々な苦労がありますが、煎じ詰めるとそのほとんどが人間関係の苦労というところに行きつくように思います。
しかも互いに必要とする切実な人間関係ほど厄介と来ています。その代表例が夫婦です。
たまに会うだけで利害関係のない人といい関係になるのは比較的容易いことですが、夫婦は切実な支え合いが必要なだけに、
きれいごとでは終われない。だから、厄介になって当然なのです。
会社の人間関係も、同様に厄介です。それは互いが必要な存在である証拠です。
会社として社会のお役に立ち、その結果として自分たちも生かされていくためには、その人間関係の厄介さを乗り越えていかなければなりません。
そのために必要なのが、社会性と人間性なのです。
社会性とは、自分が周りの人たちによって支えられているという自覚です。「お陰さま」の心と言ってもよいでしょう。
支えられているという自覚によって、初めて自分の役割を認識することができ、時に応じた行動や振舞いが可能になります。
人間性とは、互いに不完全な人間同士だという自覚です。「お互いさま」の心です。
人間はともすると自身を正当化し、相手の非をあげつらってしまいます。
社員がそれぞれに自己を正当化し相手に対して非を鳴らすような会社が、人様のお役に立つというのは不可能なことです。
自分の不完全さを自覚することによって、初めて相手の不完全さを許容することができ、互いに力を発揮することが可能になるのです。
人間はそれぞれに育った環境が違い、身に着けてきた考え方も価値観も異なります。
人が生きていくということは、そうした「自分とは違う人間」に出会い、共に生きていくということです。
当然のことながらそこには摩擦と相克が生じます。
しかし、根底に「お陰さま」の社会性と「お互いさま」の人間性があれば、その摩擦と相克を乗り越えていくことができるのです。
人は集団に拠らなければ生きていくことはできない。
だからこそ、社会性と人間性を身に着けた人こそが、その集団に貢献することができ、必要とされるのです。
それが当社の基本理念3『社員の社会性と人間性を育む会社』の背景なのです。
追伸 因みに説明会で叱った学生は、今当社で苦労をものともせずに頑張ってくれています。念のために書き添えます。