社長ブログ
森信三語録(五)
使命の自覚
①万人いずれも唯一無二、何人にも委せられない唯一独自の任務に服しているわけですが、
只それに対する十分な自覚がないために、生涯をかけてその一道に徹し、
もって国家社会のお役に立つほどの貢献がしがたいのです。
当社の売上高は昨年度は四十八億円。
日本全体の建設投資額は土木も併せて六十兆円。
シェアは0.01%にも足りません。
それでは当社の価値は、それに応じたものでしかないのかといえば、私は決してそうは考えません。
当社を私たちのお客様から見ればどうでしょうか。
その価値は建設業界のシェアに準じたものどころではなく、100%なのです。
お客様にとっては、建設を担当した当社こそがすべてであって、当社だけが唯一無二の建設会社なのです。
そうした意味で、当社は長年にわたって「何人にも委せられない唯一独自の任務に服して」きたのです。
このことは会社だけではなく、個人の場合にも当てはまります。
お客様は、自分の建築を担当してくれることになったあなたに、唯一無二の任務を任せてくださったのです。
その時点で、あなたは日本に何十万人といる建築技術者のうちの一人に過ぎないのではなく、お客様にとっては、ただ一人のかけがえのない存在になるのです。
ただ一人のかけがえのない存在であることの意味を、どこまで深くとらえられるかによって、その人の自己価値の高さは決まります。
この意味を深く捉えられれば捉えられるほど、自己価値は高くなっていくのです。
同時に仕事の持つ意味も深まって、自分にとって仕事がどれほど重要な意味を持つかも見えてくる。
そして、自ずから仕事に対する意識と姿勢が成長し、仕事の質は高まり、さらにお客様に喜んでいただけることになるのです。
それだけに留まらず、その成長は周りに影響を及ぼし、会社を変えることにつながります。
そして、会社が変われば、ひいては業界に対しても、「このような会社がある」ことによって、変化を促すことができるのではないでしょうか。
私たちが日本経営品質賞にチャレンジしている理由は、ここにもあるのです。
②われわれの生活において、物事の持続が困難だというのは、結局は真の目標をはっきりとつかんでいないからであります。
つまり最後の目標さえ真にはっきりつかんでいたならば、途中でやめようにもやめられぬはずであります。
稲盛和夫さんが、京セラフィロソフィーの中で「強く持続した願望は必ず実現する」と言われていますが、その根拠ともなるべき言葉だと思います。
頭の先に浮かんだような薄っぺらい願望・目標ではなく、本気の願望・目標は、それが実現するまで、努力を「途中でやめようにもやめらない」から実現するのです。
私も自分を顧みてその感を深くしています。
今の森長工務店は、若い頃にかくありたいと願った通りの会社になっているのです。
それ以上でも以下でもないのです。
人生はその人が思った通りになるのです。
それ故、その人がどのような願望・目標を持つかによって、人生は決まるのです。
しかし、真の目標を持てと言われても、すぐにそれが持てるわけではありません。
それでは、どうすれば真の目標をはっきりとつかむことができるのでしょうか。森信三先生は、次のように述べておられます。
天分の発揮ということは、実は単に自分のことだけを考えていたんでは、真実にはできないことであります。
すなわち人間の天分というものは、単に自分本位の立場でこれを発揮しようとする程度では、十分なことはできないものであります。
これは利己的な自分本位の立場では、その人の天分を発揮するほどの真の目標をつかむことはできないと森先生は仰られているのです。
たとえ国家社会というレベルには至れなくとも、これまでお世話になった周囲の人々のお役に立たねばならないという使命感が必要なのです。
この使命の自覚こそが、私たちに真の目標をつかまえさせてくれるのです。
人生の充実も、自分本位の立場では実現せず、使命の自覚から始まるのです。