社長ブログ
森信三語録(八)
仕事について ③
すべて手持ちのものを最善に生かすことが、人間的叡智の出発点といえる。
(森信三)
人が生きていく上で、これ程大事なことは他にはないかもしれません。
なぜなら、すべての条件が揃うなどということは、人生にはなく、いつも現状を受け容れ、手持ちのものをいかに生かすかに集中すること以外に、自分の人生を主人公として生き、責任・使命を果たしていくことはできないです。
たとえば主婦は、忙しくて買い物に行く時間が取れないときにも、冷蔵庫に残っている材料で、どれほど美味しい料理を作れるかに集中します。
それ以外に、目の前でお腹を空かしている子供たちを満足させる術はないからです。
冷蔵庫に食材がないことをを嘆いている暇はないのです。
ところが、これ程当たり前なことを我々は見失ってしまうことがあります。
十分な材料が揃っていないことを嘆き、不平不満に時間を費やしてしまう。
中には、一生を「無いものねだり」に使ってしまう人さえもいる。
手持ちのものが不足していること、与えられた条件が悪いことを、愚痴ったり不平不満を鳴らしているのは、自分で解決する主体性がなくて、他力に頼って人生を渡ろうとしているからなのです。
そこには自立もなければ主体性もありません。
自分が自分の人生の主人公であることをあきらめてしまっているのです。
松下幸之助は自らを「素直の初段」と称していました。
手持ちのものがいかに不足していようと、四の五の言わずに素直に受け容れる。
そして、手持ちのものを生かして直面する困難を乗り越えることを「素直」と表現したのだと思います。
その「素直」に徹する覚悟があったからこそ、松下幸之助は松下電器を世界的企業に作り上げることができたのです。
当社の年次計画書の「真のリーダーの心得」の冒頭に次のような文章があります。
悪条件の中で建設を推進できるものが真のリーダーである
――不足条件のもとを作ることが改革の中心
企業の革新とは、悪条件や不足条件を克服整備していくことに他なりません。
どのような大企業でも、それが起業されたときにはすべて零細企業です。
手持ちのものや条件は不足しているものばかりであったはずです。
それを克服し整備していったからこそ、発展できたのです。
我々もまた、そうあらねばなりません。
そのためには、社員の皆さんが、それぞれに「悪条件の中で建設を推進できる真のリーダー」であることが必要です。
そして、さらに大事なことは、そうした人生に対する姿勢が、皆さん一人一人の人間としての成長につながるということです。
人間的成長は、他力に頼り不平不満を鳴らすところからは、生まれてきません。
皆のために手持ちのものを最善に生かそうとする努力の中で、自立と主体性を獲得することによって、人間として成長していくのです。