社長ブログ
人間的成長とは何か
私は、ずっと以前でしたが、当時の年若き社員に、得意先から「松下電器は何をつくるところか」と尋ねられたならば、「松下電器は人をつくるところでございます。
あわせて電気製品をつくっております」と、こういうことを申せと言ったことがあります。
その当時、私は事業は人にあり、人をまず養成しなければならない、人間として成長しない人を持つ事業は成功するものではない、ということを感じており、ついそういう言葉が出たわけです・・・
(松下幸之助「一日一語」)
右に掲げた言葉は、松下幸之助の語録の中でも特に有名なものです。
「松下電器は人をつくるところでございます。」と、人を育てることが会社の目的であることを言いきっているところに、松下幸之助の本領があるのではないかと思います。
従業員の成長なくして、事業の成功はありえない。
松下幸之助は心底そう信じていたに相違ありません。
それでは、松下幸之助の言う成長とは何でしょうか。
成長の定義は様々でしょうが、私が第一にあげたいのは、「人のお役に立てる」ようになることだと思います。
人は周囲への貢献によって自分の価値を確認するのであり、その貢献感があればこそ自分の存在に自信を持つことができ、仕合せにもなれるのです。
そして、人がもっとも「人のお役に立てる」のは、職業によってです。
それ故、私たちが仕合せになるためには、「人のお役に立てる」人に成長していくことが、必要不可欠なのです。
会社の仕事において、お客様に喜んでいただけるようになり、協力業者さんにも頼りにされ、同僚からは信頼されるようになる。
そして、自分自身もその会社に確固とした居場所を見出し、生きがいと誇りを持って仕事に励む。
従業員がそんな成長を遂げている会社であれば、必ずやその会社は発展できる。
松下幸之助はこうした思いで先に掲げた文章を書いたのではないかと思います。
人間はみんな、自己に執着し、世界の中心は自分であると考えがちなものです。
そして、周りが「自分に何を与えてくれるか」という視点で人生を送ってしまう。
しかし、自分は世界の中心ではありませ自分は世界の一部でしかない。
それ故、「自分に何を与えてくれるか」という問いの先に仕合せはありえないのです。
仕合せになるためには「自分は何を与えられるか」という視点に立たなければなりません。
そして、その視点に立つためには、自己への執着を手放し、それを他者への関心に変えていかねばなりません。
そうして初めて、「人のお役に立てる」人への成長が始まるのです。
「自分は何を与えられるか」という問いが、その人の周りに良き人間関係をつくり、回り回ってその人に多くのものをもたらしてくれるのです。
それこそがあるべき人間的成長だと思います。