社長ブログ

人情の機微を知る

人情の機微を知る

人情の機微を知っていたら、天下でも取れるわ(笑)。

しかし、それを知っている人というのは少ないな。…… 

 

サービスは慈悲心から出てくる。

そういう慈悲心を欠いたサービスというものは、つけ足しや。

ほんとうに人を動かすことはできない。

いくら人情の機微を理解して、それを実行しているようでも、ほんとうにそれが生きてくるには、その奥に慈悲心がないといかんな。

それが根底やと思う。………

人情の機微を知るのは人生でいちばん大事なことや。

事をなさんとする者の要諦はそこにある。

(松下幸之助「人情の機微を知る」)

 

人情の機微を知っていたら、天下でも取れるわ」で、まず思い出すのは木下藤吉郎(豊臣秀吉)です。

信長に仕え始めた頃に、信長の草履を懐で温めた逸話や、後には小田原攻めで遅参した伊達政宗に佩刀を持たせ、まったく無防備になって見せた話は、秀吉がいかに人情の機微に長けていたかを表しています。

秀吉は戦略家ではありましたが、その戦略は人情の機微への深い理解に裏打ちされたものだったということができるでしょう。

 

また、現代で秀吉に匹敵するのは、今太閤といわれた田中角栄です。

田中角栄は周囲の人たちの経歴や家族構成、出身地などをすべて記憶していて、廊下ですれ違ったときに、家族の消息などを尋ねて人を感激させたということです。

金権政治家と言われた田中角栄の毀誉褒貶は様々ですが、高等小学校しか出ていない田中が総理大臣にまで上り詰めることができたのは、やはりこの人情の機微に聡かった故であったでしょう。

 

我々が仕事をするときにも、天下を取るかどうかはともかくとして、人に協力してもらうためには、その人の心を動かさねばなりません。

現場では職方さんの心に訴えなければなりません。

営業はお客様の心の琴線に触れねばなりません。

本社の事務であっても、人に動いてもらえるかどうかは、仕事を進める上では大変重要なことです。

ある意味、仕事の能力とは人の心を動かす能力といっても過言ではないのです。

 

それでは人を動かす元になるものは何でしょうか。

いくら正しいことを言っても、正しいというだけで人が動いてくれるわけではありません。

正しいかどうかよりも、それを誰が言っているかによって、人は本気で動く気になったり、動かなかったりするのです。

そして、それはその人と信頼関係があるかどうかによるのであり、信頼関係は自分に関心を持ってくれているか、自分のことを理解してくれているかどうかにかかっているのだろうと思います。

人を理解する、或いは理解しようと努力して初めて人情の機微が分かってくるのです。

 

森信三先生は次のように言っています。

 

相手の心に受け容れ態勢が出来ていないのにお説教をするのは、伏さったコップにビールをつぐようなもの——入らぬばかりか、かえってあたりが汚れる。

 

人を動かして仕事をしようとする人は、先にも述べたように、ただ正しいことを言っておれば良いのではありません。

相手のコップを上向けることができなければならないのです。

そのコップを上向ける名人が、秀吉であり田中角栄であり松下幸之助だったのです。

彼らは人生の苦労の中で、人の心の動きを学び、人情の機微が分かるようになっていったのだと思います。

それ故、我々が少しばかり心掛けたくらいで身に着くものではありませんし、真似ようにも真似ることはできないのです。

 

しかし、だからと言って諦めるわけにはいきません。

我々のような凡人にも出来ることを積み重ねていかねばなりません。

それを助けてくれるのが、創業記念日の社員表彰であり、1on1面談であり、モメンター研修なのです。

 

コミュニケーション能力とは、信頼関係を築く能力のことであり相手のことを理解しようとする努力のことです。

その努力があってこそ、少しでも相手の心を理解でき、信頼関係をつくることができるのです。

先にあげた三人のような人情の機微を理解するレベルに達するのは大変なことですが、相手のことを理解する努力に真摯に励むことで、お客様やビジネスパートナーとの間に共感が生まれるだけではなく、あらゆる人間関係が豊かになっていくのではないでしょうか。