社長ブログ
多くのことを成し遂げたい
死は怖くはありません。本当に怖いのは「生きなかった」ことです。
つまり大きな意味で正しいことや大切なことをする機会を十分に生かさなかったとしたら、深い悲しみを感じると思います。
しかし、自分に対して「多くのことを成し遂げることができた」と思えるなら、これほど素晴らしいことはありません。
(ヴィクトール・フランクル)
フランクルは一九〇五年生まれのユダヤ系オーストリア人で精神科医で心理学者。
第二次世界大戦でナチスに捕らえられ、アウシュビッツ強制収容所に収容されました。
戦後そこでの過酷な体験を「夜と霧」という本に著し、その著書の中で人は如何に生くべきかを愛をもって説いています。
この本は世界で千万部以上売れたというだけあって大変な名著で、私も折に触れ何度も読み返しています。
フランクルは収容所で、過酷な状況の中での人間の脆さを観察し、その中にあっても強く生きるためには、どのような心の構えが必要なのかを考え抜いたのです。
と同時に、収容所での夥しい死を見てきただけに、生きることの尊さを単なる学問上の言葉ではなく、通身徹骨に体得して、自らの生き方に反映した人でもありました。
フランクルは戦後、ロゴセラピーという心理学の新分野を確立しました。
その歴史的な業績はとても素晴らしいものですが、それは精神を病める人たちだけではなく、人類に対する深い愛情ゆえの仕事だったのです。
冒頭の言葉は、テレビの取材に対して、フランクルが答えたものですが、その言葉の深さを私たちは知らねばならないと思います。
最近採用活動で、学生の方に「どんな基準で企業を選びますか」と聞くと、「ワークライフバランス」で選ぶという答えが返ってくることがあります。
この答えが、これまで蔑ろにされてきた家族との時間やプライベートな時間をより大事にしたいということであればいいのですが、仕事に対する価値を余り認めていないもののように思えて仕方がないのです。
私たちの社会は、仕事を通じての支え合いで成り立っています。
私たちは多くの人の仕事によって支えられているが故に、私たちも自分の仕事によって、それに応えて貢献していかねばなりません。
それによって、そこに感謝と貢献ゆえの自分の居場所が見つかるのです。
そして、良い仕事をすればするほど、より多くの人や物事に貢献でき、自分に価値を感じることができるのです。
私は「ワークライフバランス」という言葉に、感謝の念と貢献感を感じることができないのです。
人生には山も谷もある。
平穏無事な人生を誰も保証してくれないのです。
人生の天変地異に遭った時、感謝も貢献もない人間を誰が救ってくれるのだろう。
そんな危惧を覚えざる得ないのです。
人生は一回こっきりなのに、そんな惨めな人生を送っていいのだろうか。
どうせ生きるのなら、どうせ困難に満ちた人生を生きるのなら、フランクルが言うような「多くのことを成し遂げることができた」と思えるような人生を送ってもらいたいと願うのです。
私も世間的には晩年と言われるような年齢になってきました。
まだフランクルが言うような心境には立ち至ってはいません。
まだまだやらねばならないことが、たくさん残っています。
それらをやり遂げて、最後には「多くのことを成し遂げた」と思いたいものです。