社長ブログ
職業について
最近の学生の企業選びの第一条件は、その企業の福利厚生だと言われています。
もちろん、学生から見れば、それも無理からぬ面もありますが、それがすべてに優先する条件になっているのは、何か不気味な感じがします。
その企業の立派な福利厚生に、収益力の裏付けがあるのならともかく、それが人集めのための見せかけだとしたら、長続きする筈はなく、学生の期待は早晩裏切られることになるでしょう。
また、その福利厚生が収益力に裏付けされているとしても、福利厚生目当てのモチベーションの低い学生の居場所を、いつまでも高い収益力のある会社が確保してくれるようには思えません。
有り得ない話が、さも有るかのように世間を通っているのが、私にはよく理解できないのです。
もっとも今の学生の大半が、福利厚生を就活の第一条件にしているとは私には思えません。
現に数年前母校の大学で講演をした時に、学生から返ってきた手応えは素晴らしいものでした。
その時の経験から言えば、マスコミが喧伝する学生たちの姿が、彼らの実像だとは思えないのです。
むしろ、今の若い人たちに職業に対する価値観を誰も語っていないのではないか。
それ故、彼らは職業について何の知見も形成できず、会社案内に記載されている福利厚生を基準にするしか企業を選べなくなっているのではないか。
そんな気がします。
人は集団的動物です。これが人間のもっとも基本的な属性だと言ってもいいでしょう。
人は人を支え、人に支えられながら、初めて生きていくことができるのです。
そして、「支え支えられ」という関係の中核をなすのが職業なのです。
人が職業に就くということは、その「支え合い」の輪の中に、自分も己の職業をもって参加することなのです。
職業こそが人の最も基本的な属性である「支え合い」を成立させているのです。
それ故、人が充実した人生を送りたいと思えば、それは職業を通して行われることになります。
森信三先生の次の言葉は、これまで何度も引用してきましたが、「支え合い」に貢献することが、人生の意義だと先生はおっしゃられているのだと思います。
人生の意義は、自分の全能力を発揮して、それが人のためにもなるという以外にはない。
全能力を発揮するのは、現実としては、職業を通してする以外にはない。(森信三)
しかも、それはその人の社会的な地位の高下によって、意義の大きさが変わってくるのではないのです。
むしろ、その人の置かれた場所で、その人の資質をどれだけ出し切れるかどうかによって、意義の有無が決まってくると先生は言われているのです。
一人のお客様に喜んでいただくことは、そんなに簡単なことではありません。
それは現実に皆さんもよくご存じだと思います。
全能力を発揮してこそ、お客様に喜んでいただける。
そして、お客様に喜んでいただいて、初めて自分の人生の意義を感じ取ることができるのです。
これを逆に言うと、全能力を発揮していないと、お客様に喜んでいただけない。
お客様に喜んでいただけないと、自分の人生の意義を感じることができない。
そして、心が荒んでいく。
心の荒みは手抜きから始まるのです。
今、働き方改革が進んでいます。
生産性を上げることには大賛成ですが、職業の意義を軽視する風潮を生み出す懸念も感じるのです。
万が一そうなれば、職業を通してしか実現できない人生の意義と喜びを忘れさせてしまいます。
そんな世の中にしてはならないと思うのです。
今年も暮れようとしています。
振り返れば、多事多難でもありましたが、皆さまのお陰で、無事に乗り切ることが出来ました。
心から感謝を申し上げたいと思います。
良い年をお迎えください。