社長ブログ
「応援してもらえる人」になるために
三度たく飯さへこはしやはらかし 思ふままにはならぬ世の中
と言へり。
甚だたがへり。
これ勤むることを知らず働くこともせず、人の飯をもろうて食う者などの詠めるなるべし。
それ此の世の中は前にも言へる如く、恩に報うことを厚く心得れば何事も思ふままなるものなり。
しかるを思ふままにならぬと言ふは、代を払はずして品を求め、蒔かずして米を取らんと欲すればなり。
此の歌初句を「おのがたく」と直してわが身の事にせば可ならんか。
(二宮尊徳夜話九三・報徳の道理の広遠)
〈現代語訳〉
三度たく飯さえ硬し柔らかし 思うままにはならぬ世の中
という歌があるが、大変な間違いである。
この歌は勤勉であることを知らず、まともに働くこともせず、人から飯をもらって食う連中が詠んだものであろう。
この世の中は、前にも言ったように、恩に報いることを厚く心掛ければ、何事も思うままのものなのだ。
それを思うままにならぬと言うのは、代金を払わないで品物を求め、蒔かないでおいて米を収穫しようと望むからなのだ。
この歌の初めの五字を「己(おの)が炊く」と直して自分に引き比べれば、少しはまともな歌になるだろう。
人が良い仕事をするためには、「応援してもらえる人」になることが何よりも大事だと私は思っています。
どんな仕事も、一人で出来るわけではありません。
必ずチームを組まなければ、仕事はできないのです。
一人で仕事ができそうな小説家であっても、編集者や挿絵作家などとの共同作業は不可欠なのです。
まして、会社での仕事は、広範囲にチームを組んで行っていかねばなりません。
それ故、良い仕事ができるようになるためには、「応援してもらえる人」になることがとても大事になるのです。
そして、「応援してもらえる人」になるためには次の二つの条件を満たさねばなりません。
一つ目は、当たり前のことですが、人が応援してあげようと思うほど一所懸命に仕事をしていること。
いい加減に手を抜いて仕事をしている人間を、誰も応援してあげようとは思わないでしょう。
二つ目には応援してもらったことに感謝できること。
仮に一所懸命に仕事をしても、応援してくれた人に感謝できなければ、次からは応援してもらうことはできません。
応援してもらった人に感謝できれば、次も、またその次も応援してくれることになり、その人を応援してくれる人の輪はどんどん広がっていくでしょう。
一年や二年では彼我の差は目立たないかもしれませんが、十年、二十年たつと、その差は、もう取り返しがつかないほど大きくなります。
それ故、冒頭に掲げた二宮尊徳の言葉「恩に報いることを厚く心得れば何事も思ふままなるものなり」は、人生を左右する一大事なのです。
当社で、竣工礼状や年賀状を奨励しているのは、「恩に報いることを厚く心得」るためなのです。
それだけではありません。
創立記念日の社員表彰、「ありがとうBOX 」など恩に気付くキッカケを多く設けているのは、社員が良い仕事、大きな仕事が出来るようになるだけではなく、皆が「何事も思ふまま」に人生を送れるようになるために必要だと思っているからです。
当社の理念である「『ありがとう』の溢れる会社」をつくり、社員みんなが「思ふまま」に人生を送るために、二宮尊徳のこの言葉はたいへん深い意味を持っていると思います。
自分が受けた恩が分からず、支えられている事実に気付かず、いたずらに「思ふままにはならぬ世の中」を嘆くのではなく、「思ふまま」の人生を送るために、この言葉をじっくり味わっていただければと思います。